日蓮正宗 昭倫寺

立正安国論(h30.2)


(立正安国論 御書二三六頁五行目)

 仁王(にんのう)経に云はく「国土乱(みだ)れん時は先(ま)づ鬼神乱る。鬼神乱るゝが故に万民乱る。賊来たりて国を劫(おびや)かし、百姓(ひゃくせい)亡喪(もうそう)し、臣・君・太子・王子・百官共に是非を生ぜん。天地怪異(けい)し二十八宿(しゅく)・星道(せいどう)・日月時(とき)を失ひ度を失ひ、多く賊の起こること有らん」と。亦云はく「我今(いま)五眼をもって明らかに三世を見るに、一切の国王は皆過去の世に五百の仏に侍(つか)へしに由(よ)って帝王の主と為(な)ることを得たり。是を為(もっ)て一切の聖人羅漢(らかん)(しか)も為(ため)に彼の国王の中に来生(らいしょう)して大利益(りやく)を作さん。若し王の福尽きん時は一切の聖人皆捨去(しゃこ)(せ)ん。若し一切の聖人去らん時は七難必ず起こらん」已上。
 薬師経に云はく「若(も)し刹帝利(せっていり)・潅頂王(かんじょうおう)等の災難起こらん時、所謂人衆(にんじゅ)疾疫(しつえき)の難・他国侵逼(しんぴつ)の難・自界叛逆(ほんぎゃく)の難・星宿(せいしゅく)変化(へんげ)の難・日月(にちがつ)薄蝕(はくしょく)の難・非時風雨の難・過時不雨の難あらん」已上。
 仁王経に云はく「大王、吾が今(いま)化する所の百億の須弥(しゅみ)、百億の日月、一々の須弥に四天下(してんげ)有り、其の南閻浮提(なんえんぶだい)に十六の大国・五百の中国・十千(じっせん)の小国(しょうごく)有り。其の国土の中に七つの畏(おそ)るべき難有り、一切の国王是を難と為(な)すが故に。云何(いか)なるを難と為す。


(通解)

任王経には次のように説かれている。
「国土が乱れる時は、まず鬼神が乱れる。
鬼神が乱れるゆえに万民が乱れるのである。
他国の賊の侵略によって、万民が殺害されたり、住むべき処を奪われ、また家臣・君主・太子・王子・役人等が互いに意見の相違を起こして相争うようになる。
天地には種々の異変が起こり、天の二十八宿、星の運行、あるいは太陽や月の運行が正常どおりでなくなり、また、国内には多くの賊が起きて、人々は異常な苦しみを受けるであろう」と。

また同じ仁王経には
「仏が今、五眼をもって、明らかに過去・現在・未来の三世を見ると、世の中の一切の国王は、みな過去世において五百の仏に仕えた功徳によって帝王となることができたのである。
この功徳のゆえに、一切の聖人や羅漢が、その王のために生まれてきて、国王を助けて大利益を為すのである。
しかし、もし国王が善根を積まないで、福徳の尽きてしまうときには、一切の聖人はみな、その国土を捨て去ってしまうことになる。
もし、一切の聖人が去ったときには、七難が必ず起こるであろう」以上。

薬師経には次のようにある。
「もし、刹帝利・灌頂王等の者に災難が起こるときには、具体的には次のような難がある。
伝染病が蔓延して大勢の民衆が死亡する難、他国から侵略される難、自国内において叛逆・同士討ちが起こる難、星の運行に異変が生じる難、太陽や月が不規則に薄蝕する難、時期はずれの時に暴風雨のある難、降るべき時節に雨の降らない難、である」以上。

仁王経には、
「大王よ自分が今教化するところの百億の須弥に百億の日月があり、また一つ一つの須弥に四天下がある。
そのうち南閻浮提に十六の大国、五百の中国、十千の小国がある。
その国土の中に七つの恐るべき難がある。
そのわけは、一切の国王がこの七つの難をなすからである。
それでは、具体的にいかなる事を難となすのか。